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第2回 是清一家言

 シリーズ 昭和恐慌を乗り越えた一家言の第2回となります。

 「処世一家言」 高橋是清 述 今日の問題社 昭和10年 より

第2話 人のサラリーと自分と比較するな

 巷間よく言われることですね。自分より仕合わせな境遇にあるものをみて、自分の境遇と比較すれば不平が起こる。この不平という奴が、その人の生涯を不愉快ならしめ、不幸に陥れる原因である云々、よって他人と比較するような愚はしないことだ。これが書き出しの概略。さて、前略です~

・・・不平を起こすくらいなら、そこに使われてサラリーを貰うことを止めるがよろしい。サラリーマンを廃業して独立するがいい。独立してやれば間も語とも自分の力量一杯であるから、不平も起こらぬだろう。けれども独立が出来ないくらいならば不平は言わないことだ。
 心中に不平があればどうしても仕事の上に現れる。そうすると、あの男は真面目でない、忠実ではないと言うことになって、使っている人から信用されなくなる。これが凡ての失敗の元である。
 では我輩は心中に苦悩を感じたことが無いかと言うに、決してそうではない。国家の前途に対して心を苦しめることは別として、自己一身上に苦悶を禁じ得なかった経験は幾らもある。



 ~中略、自分一人の苦労なら我慢できるが、家族ともどもの苦労は身に染みたという体験談。その間、文部省、農商務省(現・経済産業省及び農林水産省)の官僚としても活躍、農商務省の外局として設置された特許局の初代局長に就任し、日本の特許制度を整えた。官僚としてのキャリアを中断して赴いたペルーで銀鉱事業を行うが、すでに廃坑のため失敗。再び帰国した後に川田小一郎日銀総裁に声をかけられ、日本銀行に入行。第1回エントリに引用したwikiから、ペルーの失敗のときの苦難の裏で、家族にも「もともとの無一物じゃないか」と説得する逸話~
・・・空を飛ぶ鳥でさえも、不自由なく暮らすことが出来るものを、人間が真心をもって働いて、難儀する道理があるか、古人はいっている。けれども、ただ働いて食い、あくせくとして一身を肥やすだけならば我々も飛ぶ鳥も、何の変わりがない事になるのだ。


 非常に手厳しいアドバイスもありますが、太字着色部分と末尾の「一心に働いて食うだけなら鳥と同じ」との達観の間に、苦難を乗り越えた実践哲学があります。続けます。




第3話 なぜ金を儲けるか、なぜ金を貯めるか

 これまで、日本人の特質として、宵越しの金は持たぬといって、とかく金銭を卑しむ風習があった。これは、極端なる拝金主義の人々が、ただ金、金、金で金を貯める為には、義理も人情もないといった行動に対する反発的な気概として、ついに一つの美風のごとく認めらるるに至ったものであろう。
 ところが欧米の思想が輸入された結果、金を貯めることは必ずしも人間の恥辱ではないということが一般社会の常識となり、ついには極端に走って、あまりに金銭の価値を重視しすぎ、ややもすれば黄金万能主義の傾向すら無いでもない。
 この二つの思想はいずれも極端に走ったもので、到底賛成しかねることは勿論であるが、では我々の金銭に対する正当の観念は果たして、どの程度が適当であろうか。換言するならば、金銭の人生に対する真の価値は果たして、いかなる点に存するのであろうか。これはよろしく一考しておくべき問題であろうと思う。
 世界中で金銭の価値を最もよく認めて、しかも最も多くこれを尊重する国民は、米国人であろう。何が故に米国人は、それほどに金銭を尊ぶのであろうか。まずこれを考えて見る必要がある。
 元来、米国人が金銭を尊ぶのは、我輩の見るところによれば、金銭それ自身を尊ぶのではなく、かの民族特有の、極めて強い個人的独立心から来ているもののように思われる。この点に十分注意をして貰いたい。
 彼等はいかなることがあっても決して、他の助力を仰がないという性格の国民である。自分は自分の腕を持って、あくまでも世に処して行くという考えの強いことは、日本の風習と大分異なっている。
 卑近の例を挙げるならば、乞食の貰い方からして、すでに米国と日本とで違っている。往来に座って額を地べたにすりつけ、哀れみを乞うのが日本の乞食である。然るに米国の乞食になると、無効の紳士は大抵、運転手を伴わずに自分で自動車を駆るのであるが、その自動車が着くところに待っていて、ドアを開けてやるのである。そして黙って手を差し出す。紳士はその手の上に5㌣か10㌣投げてやる。
 すでに乞食すら、一種の仕事をして報酬を得ようとするので、決してただ貰おうとはしない。ここが面白いところではないか。独立心を欠いた者の極点である乞食ですら尚、いくらかは独立心を持っているのだ。ただで他人のお情けにはすがらぬ。幾らなりとも仕事を成し、その報酬として貰うという了見は乞食ながら大いに、我々の参考とすべき点があるではないか。
~中略、米国人の独立独歩の精神を親子関係、友人関係からも考察。その結果、自然と金銭を大事にせざるを得ないことになる。としている。
・・・米国人の金を尊ぶ所以はここから来ている。決して金そのものを尊ぶのではなく、独立独歩の必要から起こったものであることは極めて明らかである。



 ちょっと長い引用になりましたが、第3話は大変興味深く殆ど抜き出しました。日本人の感覚もアメリカ人の感覚もそんなに変わらない、戦前戦後を通して、進歩が無いと言っても過言ではない、とまで現状の景気不安にピッタリ寄り添っている観察ではありませんか。サブプライム~リーマン~GM破綻に見るマネーゲームの終焉が行き着く先であったことも、戦前のブラックマンデーと比較してもよいでしょう。なお、現在は「乞食」と言う表現は差別的であるということで放送コード、出版コードにひっかるようですが、食を乞うという明快な理解になりました。で、米国は上に見るとおり、何かしら「押し売り」でも役務の提供があるので、「貧困層」という表現で間違いはないと思います。現在も無理やり写真を撮って売りつける、停車したらイキナリ洗車されるなど、飯の種に事欠かない様子。日本のホームレスでも空き缶、鉄くずを集めたり、都心部では雑誌を集めて路上販売したり、昔ながらの乞食は減っているのかもしれません。「貧困層」でやはり正しいのか、とも思います。
 現在、世界的に金融商品や株価下落のかたちで、大きく経済不安が長引いていますが、輸出のみに依存しない内需の多さや、在庫調整が進み輸入力があることの強み、内部留保などの企業体力、基幹部品などの日本の優位性など、世界不況だから強い日本の経済構造にもスポットを当てていただきたいものです。景気の足を引っ張るのは「弱気」、不安を煽るだけなら霊感商法と同じです。

テーマ : 組織の人材育成
ジャンル : ビジネス

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