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週刊 高橋是清 第5回です。

 第五回です。前回までの「気の持ちよう」な感じから少し具体的になっています。とくに仕事を部下に配分する上司にこそ読んで頂きたい内容だろうと思います。

第五話 時間の束縛と仕事の束縛

(前半部の要約・英国紳士の働きぶりについて※落日前のロンドンです)
 ロンドンに行って銀行勤め英国人を見ると良く働く。朝早くから出て来て夜遅くまで夜業し、帰りは大抵12時過ぎ。
 その日に為すべき仕事は、どんなことがあっても必ず成し遂げ、明日に延ばさない習慣のため。
 深夜帰宅すると妻君は食事の支度だけしておいて、先に寝る。彼等は夕飯は銀行で食べるが、残業が長すぎるので夜食を何かつまむ。朝は出勤が早いから、妻君より早く起きて食事を済ませてサッサと出かけ、昼食はもとより銀行で。夫婦親子が団欒して食事をともにするのは、週にただ日曜に一回あるのみ。随分忙しい生活である。休む暇もないほどクルクル働いて、その間、何の不平不満もなく、孜々として与えられた仕事に没頭している。
 英国人は、こんな忙しい思いをしながら不平ももらさず、どのように満足して働いているのであろうか。それは仕事に関する概念が違うから。

 日本人は時間に束縛されているが、英国人は仕事に束縛されているからである。


 戦後の日本人、特に高度成長~バブルに至るまで、通過した人には懐かしい風景かもしれません。ワーカホリックという言葉の輸入と、過労死という言葉は逆にカローシとして輸出しましたね。
 ただ、着色強調部分より中段以降の分析にはハッとすることも多いです。要約ではなく、抜粋のスタイルに切り替えて、続けます。
 


 時間に束縛されている日本人は、規定の時間に出勤し、一定の時間を会社なり、銀行なり、役所なりで、過ごしさえすればそれで済む。時間通りに出ていれば、それで差し支えないのである。特別に大奮闘する必要もなければ、これこれの仕事を、是非、今日中に仕上げねばならぬということもない訳だ。今日の仕事を、明日に延ばして顧みないのもこの故であり、時間さえ来れば、仕事の途中であろうがなかろうが、バタバタと退出してしまうのもこのためである。
 仕事に束縛されていても規定の時間を守るべきは、元よりである。が、問題は仕事が終わったか否かにある。だから今日為すべき仕事が終わらなければ、夜になっても帰らない。また帰れなくても少しも不平を漏らさない。それどころか、それを当然だと思っている。
 仕事に束縛されているから、彼等は、一意専心、全力を挙げて努力する。
 では、仕事さえ片付けば、早引けしても差し支えないように聞えるが、決してそうではない。一定の時間を守ることは、必要であるのみならず、仕事の割り当ても、一日働くだけのものはちゃんと与えられてあるから、早く片付けて早く帰るなどということはできない。もし与えられた仕事が終わっても、それで手を束ねて退出時間の来るのを待つというような機械的の人はいない。
 日本では、その日の伝票が記入済みとなれば、仕事は終わったものと安心しているが、英人はそうではない。常に仕事の歴史を研究している。帳簿によって、前日、前月、前年の状態を良く研究し、頭脳の中にスッカリ事業の状態をたたみ込むように努める。どの筋は近頃どうであるとか、一年前は同であったかとか、彼の業務状態はどんな風に発展してきたかとか、銀行とその相手については、微細な点に至るまで、悉く究め尽くそうと努力する。
 従って、成績も上がれば、手腕も練磨されてくるのである。日本の如く、ただ機械的に働いていたのでは、上達する時期がない。


 どうでしょう。「今日の仕事は明日へ残すな」とは、現在働く我々はよく言われてきていることですね。このあたりの評価が、いわゆる「出来るアイツ」と「出来ないオマエ」の別れ目になっていると思います。ちょっと風刺的になってしまうかもしれませんが、出来る職人の親方と、出来ない窓際サラリーマンとの違い、仕事が好きかどうか、誇りを持っているかどうかの分かれ目かもしれません。あるいは是清翁、総理や経済閣僚を歴任した経歴からいって、高級官僚などへの皮肉かもしれません。色々な批判は目にしますが、霞ヶ関も丸の内も深夜まで残業して国家に貢献する現場の人間がいます。そのあたりへのエールのような気がしないでもありません。続けます。

 仕事の都合で、非常に忙しい人と、閑な人とが出来ることがある。そんな時、閑な人が「お手伝いしましょうか」と云っても、忙しい人は一応は断るが、上役の手を通じて申し込まれれば、快く承諾し、仕事を平均に分配する。だから、ある仕事を掌っている閑な人も、自然と他の仕事を覚え、従ってまた手伝いする機会も多くなるということになる。
 しかし、権限を守るということにかけては、非常に厳格である。決して他人の仕事に嘴を入れない。この権限を守ることの厳格なことは、まことに感心すべきものがある。これもわれわれの守るべきことの一つであろうと思う。


 これが、今回のまとめです。上司の采配について、かなり具体的に示唆しています。社長として部課長がこのようにしてくれれば何も言うことはありません、と思います(原価体質や利益構造については話は別ですが)。やる気のある若手が「お手伝いしましょうか」という光景をよく見ますが、上司の目配り如何で成長するか否かを左右してしまいます。個々人の評価もさることながら、伸びる会社、沈む会社も、社風を今回の日英比較に当てはめて見ると、なんとなく当たりそうです。

 落日前の英国と「お断り」を入れたとおり、欧米先進国が豊かであったのは産業革命以降に必死で働いた国民がいたからであり、現下の自国でものづくりが残らず、安易な移民政策で苦心し、金融だけで浮沈するとは夢にも思っていなかったでしょう。国民が働くなって儲からなくなる、当たり前のことです。富国強兵追い付け追い越せのヤングジャパンの成長は、黄禍論として大変脅威に映り、日本包囲網になったところがこの頃のお話だと思いますが、戦後もバブル崩壊に至るまでに週休2日制や、連休の作り方も、土日月と振り替え休日を翌週頭に持ち込んでいることが弊害であると何かで読みました。外圧も含めて「仕事好き」だった日本人が解体されての現下の景気。中韓、新興国、東南アジアなど、ガンガン働いて追い付いてきた国々と、やはり派遣切りと相反する単純労働の外国人の受け入れ。欧米の苦悩にも追い付きそうです。仕事をすれば儲かる、サボれば儲からない。変わらない真理を、是清翁は教えてくれたのかもしれません。



 マズローの欲求段階説という有名な理論があります。人間の3大欲求をもとに、人間の自己実現欲を5段階に解説したもの。本稿で考察した働き者の英国紳士と落日の英国。同じく、働き者の先祖先輩と現代の我々と社会。成長の段階として捉えてみるのも面白いと思います。法人も国家も人間の集まりなので、そんなに違和感はないでしょう。
リンク先より、

1)生理的欲求  生命維持のための食欲・性欲・睡眠欲等の本能的・根源的な欲求
2)安全の欲求  衣類・住居など、安定・安全な状態を得ようとする欲求
3)所属と愛の欲求  集団に属したい、誰かに愛されたいといった欲求
4)承認の欲求  自分が集団から価値ある存在と認められ、尊敬されることを求める欲求 
5)自己実現の欲求  自分の能力・可能性を発揮し、創作的活動や自己の成長を図りたいと思う欲求

 これをピラミッドの下層より5段階に振り分け、構成比にもなっています。自分の段階はどこにあるか、部下、組織、会社をどこに当てはめ、どのようにしたいか。そして我国や先進国と途上国はどんな状態にあるか。世界が平和国家ばかりではなく、日本だけが呑気な事をやっている状況が目に浮かびませんか。紳士たれ、という成熟と、油断するな、という安全保障、それが世界の中の日本という視点です。(話しが大きすぎましたか?)

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ジャンル : ビジネス

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旅を仕事にしたい今日この頃。

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