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週刊 是清金曜日 第七回

 第7回です。今週は著名経済人、O会長の基調講演でも勉強したばかりなので、記憶が温かい内に畳み掛けようと思います。

第七話 他に頼るのは自己の死滅だ

 わが輩は、どんなに困ったときでも、決して、自分の一身上に関し、他人に依頼したこともなければ、また、自ら推薦したこともない。元来、人間がこの世に生を受けた以上、自分のことは自分で処分し始末すべきである。他人に依頼し、その助力を仰ぐのは、自己の死滅であると、わが輩は信じている。故にわが輩は他に依頼し、その助力を受けようと思ったことは一度もない。
 
 他人に依頼せぬとなると勢い、自ら仕事を探し、自分の腕により額に汗して衣食の料を得ねばならない。わが輩は若い頃、これがために英文の翻訳に努めたことも屡々ある。外字新聞を翻訳して日本の新聞に投書し、その稿料をもって糊口をつないだことも一再にとどまらぬ。得るところは僅かでも、まったく自己の力に依頼し、決して他力にすがらなかったと思えば、その金の尊さ有難さはまた格別である。

 少年の頃から今日に至るまで、わが輩は常に自己を頼みとして生きて来た。いかなる逆境も困難も、まったく独立自力によって切り抜けてきたように思う。
 
 わが輩はまた、生活上の困窮に陥ったとき、他人に訴え、その助力を乞わなかったのみならず、これを家族にも漏らしたことがない。明日の米代にも差し支え、自ら苦心惨憺することがあっても、困難は自己一個の胸中に秘めておいて他に告げなかった。云ったところで、ただ家族の心配を増させるだけで、何の益するところもないと信じていたからである。
 家族としても、自然に現れる我輩の顔色を見ては、困っているらしいくらいのことは必ず読んだであろう。辞職して一定の収入を失ったという一事から見ても、直ちにこれを想察し得たであろう。だが、わが輩は黙っていた。ただ単に云わないばかりでなく、ひたすら隠すことに努めた。

 幸いにして、衣食に窮せぬようになった今日も、米塩の資に困った往昔も、わが輩の態度だけは、まったく同じであると自分は信じている


 今回は短文なので、一気に全文から引用しました。着色などの強調部分に注目してください。
 まず、説明は要らないと思いますが、念のため。前回より多用される「依頼する」「依頼心」という語について、①依存心②人任せにする③人の所為にする④自助努力を怠っている状態、などを「依頼」という言葉で総括されています。反語として、自立、独力、独立心であることが文脈からヒシヒシ読み取れるでしょう。本章はタイトルから「依頼心は自我の消滅である」厳しいメッセージです。

 実は、全話を通して本章こそが現代との「心の構え」の違いだと、シミジミ思います。大きな自負心をもって事業に当たる方も勿論いますが、ストレス耐性という言葉のない時代の「痩せ我慢」や「武士は食わねど」というプライドです。是清翁の実践経験に基づくメッセージは、O会長の経営術と見事に当てはまります。基調講演を主催してくれた地銀のN頭取は、「O会長の哲学は、(頭取の尊敬する)安岡正篤と通づる」と評価され、O会長は「そんな人は知らん(おそらく謙遜)、自分で掴みとった信念だ」とおっしゃったそうです。


参考に2冊。


「心の傷」は言ったもん勝ち (新潮新書 270)「心の傷」は言ったもん勝ち (新潮新書 270)
(2008/06)
中嶋 聡

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内容(「BOOK」データベースより)
「心に傷を受けた」と宣言したら、あとはやりたい放題。詳しい検証もなく、一方的に相手を加害者と断罪する―そんな「エセ被害者」がのさばっている現代日本。PTSD、適応・パニック障害から、セクハラ、痴漢冤罪、医療訴訟まで、あらゆる場面で「傷ついた」という言い分が絶対視されている。そう、「被害者帝国主義の時代」が到来したのだ。過剰な被害者意識はもうたくさん!現役精神科医が示す処方箋。

出版社からのコメント
「心の病」を理由にして会社を休んでいるのに、どうやら遊び呆けているらしい同僚。ちょっとした注意を「パワハラだ」と騒ぐ若僧。どんな行為でも「セクハラ」と主張する女性......。「心に傷を受けた」と宣言したら、あとはやりたい放題。詳しい検証もなく、一方的に相手を加害者と断罪する。そんな「エセ被害者」とでも言うべき人たちが、現代日本にのさばっています。
 現役の精神科医で、沖縄でクリニックを開業している著者は、こうした風潮を「被害者帝国主義の時代」と断じ、強い精神力を回復させるための処方箋を示します。なぜ日本人はここ二十年で、かくも「ひ弱」になったのでしょうか。

 過剰な被害者意識を振り回し、周囲に迷惑をかける「エセ被害者」。彼らに少しでも悩まされた経験のある人には、必読の書と言えるでしょう。



あなたの隣の“モンスター” (生活人新書)あなたの隣の“モンスター” (生活人新書)
(2008/05)
齋藤 孝

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出版社/著者からの内容紹介
キレる大人が増えている!
日本人を蝕む、心のモンスター化という現実。
いきなり怒鳴る、殴る、蹴る......こうしたキレる大人の増加は、日本社会のモンスター化の始まりに過ぎない!
ちょっとしたストレスで簡単に現れる、一人一人の心の中に潜むモンスター。
日本社会は、どこへ向かおうとしているのか。硬くなった日本人の心を解きほぐし、成熟した日本社会を目指す!


 どちらもおススメですが、上段、「心の傷は、、、」は、精神科医として、商売の為にならない現状の吐露から始まり、心を強く持つことへの励ましで締めくくります。あなたは正常だ、といっても聞かず、症例に当てはまるまで、何とかして「病人」あるいは「被害者」になりたがる人たち。現行制度上は「患者」と認定してあげないといけないそうで、PTSD、適応・パニック障害など、新しい症例が増えていく。その内情が導入部。終わりに、トップアスリートの精神鍛錬や、著者の苦学時代の我慢、忍耐から、克服する訓練の重要性を繰り返し説きます。元気になる一冊。

 こんなところは、もうクリアしたよ、という方はコチラ。

大人の見識 (新潮新書)大人の見識 (新潮新書)
(2007/11)
阿川 弘之

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内容(「BOOK」データベースより)
軽躁なるものを勇豪とみるなかれ、かつて戦国の名将はそう戒めた。国を誤る指導者の愚があり、滅亡の淵から救い出した見識もあった。英国流の智恵とユーモア、フレキシビリティを何より重んじた海軍の想い出…、歴史の中へ喪われゆく日本人の美徳と倫理をあらためて問うとともに、作家生活六十年の見聞を温め、いかなる時代にも持すべき人間の叡智を語る。

成熟した「大人」のものの見方、考え方。渋いです。

 それと、このあたりのストレスの省き方といえば、そろそろ本ブログにも福沢諭吉先生の出番か、とも思います。合理的です。乞うご期待。

テーマ : コーチング
ジャンル : ビジネス

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